政見、政治姿勢 バックナンバー.013


日本の危機

 9月4日の新聞各紙の予想では、来る衆院選で、自民党が単独で241の過半数を上回るだけでなく、場合によっては270〜280の議席を獲得する勢いだそうです。

 小泉陣営は、この選挙を「郵政民営化に賛成か反対か」を問う国民投票だと訴え、あらゆる手段を使って、賛成すなわち改革推進、反対すなわち改革阻止だとのイメージを有権者に植え付けることに、専心してきました。この選挙戦略が図に当たったようです。

 しかし、小泉マジックのとりことなって、ここまで来てしまった有権者も、自分を省みる冷静さを取り戻せば、「郵政民営化に賛成か反対か」という問いかけの中には大きなトリックが隠されていることに、気づくのではないでしょうか。

 小泉首相が画策しているのは、参議院で否決された郵政民営化法案と同じ法案を成立させることです。そのために衆議院を解散し総選挙に打って出たのですから、選挙のほんとうの争点は、「郵政民営化に賛成か反対か」ではなく、個別、具体的な「小泉政府の郵政民営化法案に賛成か反対か」、でなければなりません。

 小泉首相が誠実な政治家であれば、「私が成立を目指した郵政民営化法案が国会で否決されました。私はどうしてもこの法案を成立させたいので、衆議院を解散して国民の皆さんにその法案に賛成か反対かを問うことにしました。この法案どおりに郵政事業が民営化されれば、かくかくしかじかの効果が生じます。どうかその良し悪しを判断の上、投票してください。」と、有権者に訴えていたはずです。しかし、彼はそうしませんでした。なぜでしょうか。

 どんな有権者も、白紙の状態で、「郵政民営化に賛成か反対か」と問われれば、直接的な利害関係者は別として、確信をもって「反対」と答えることはできないでしょう。一般論として、民営化は真の郵政事業改革につながるかもしれないからです。しかし、「先の参議院で否決された郵政民営化法案に賛成か反対か」と問われれば、話は別です。その場合、有権者は法案の具体的な中身を知ることなく賛成か反対かを決めることはできないのですから。

 そして、実は、その具体的な中身は改革とは名ばかりの、欠陥だらけの民営化法案なのですから、それを明らかにして有権者に賛成か反対かを問えば、賛成が反対を上回ることはあり得ず、従って、選挙に勝つ目算は立ちません。「民間にできることは民間に」とか「官から民に」とか「大きな政府から小さな政府へ」といったお題目も、この法案にはまったく当てはまらないことも、有権者に気づかれてしまいます。

 だからこそ、「先に参議院で否決された小泉政府の郵政民営化法案に賛成か反対か」というほんとうの争点を後ろに隠して、「民営化に賛成か反対か」という問い方にすりかえ、賛成する自民党と公明党は日本をよくする改革派であり、反対する野党は日本の発展を遅らす守旧勢力だと、有権者に思い込ませる算段をしたのではないでしょうか。

 このようなカラクリを用いて有権者を操作することに長けた人物が、日本の指導者であり続けることに私は大きな危機感を禁じえません。また、そのような人物を総裁に戴き、それに盲従する徒党からなる政党が選挙で圧勝することになれば、日本の将来は暗澹たるものになると、危惧せざるを得ません。そうさせないために、私たちは今からでも遅くないから、小泉法案の中身を学び、錯覚から醒めて、賢明な有権者として投票所に足を運びたいものです。


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