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静岡県議会議員 千石貞幸
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県政報告

野次と怒号のなかの反対討論

次に空港事業にかかる経費と収益性です。
20年度予算には空港管理費が17,000万円計上されていますが、これから推測すると空港がフルに稼動するようになれば年間ベースの管理費は指定管理業者への委託費も含めて8億円ぐらいにはなりそうです。これだけでも上限3億円の収入しか見込めない空港事業の赤字は5億円を超えますが、コストに加えるべきものとして空港部の職員給与費があります。20年度予算では86,100万円が計上されています。これを加えると赤字は13,4億円になります。すなわち富士山静岡空港は経常的に13,4億円あるいはそれ以上の赤字を免れない事業だということです。その上にさらに販売促進や広告宣伝のための政策的な経費をかければその分だけ、赤字は上積みされます。平成20年度予算ではそれが86,900万円ですが、その政策の効果は極めて限定的だということは、私が申したとおりです。どんなに多くても3億円程度の収入しか期待できない事業に経常的にその6倍に近いコストをかけ、さらにその上に平成20年度予算ではその3倍近い政策的経費をかけるというのはあまりに財政規律を失したものであり、これには強く反対します。

実は空港事業にはさらに大きなコストファクターがあります。それは発行総額855億円にのぼる空港関連県債の利息です。19年度末の未償還残高は658億円ですが、毎年支払わなければならない利息の額は、元利均等払いのもとでは今なお年間20億円は超えると思われますが、ニューパブリックマネージメントの考えを持ってすれば、当然のことながら、これらをも空港事業会計のコストとして把握しなければなりません。こうやって見てくると、空港事業がいかに大きな負担を県民に求めているか、その事実にあらためて粛然とします。

このような議論に対する反論として、知事あるいは空港部は、富士山静岡空港は県民にとって必要、不可欠な社会インフラであり、公益性の高い事業であるから、コストは問題にするに当たらないという含みの発言をしています。さらには、空港が県内の経済にもたらす効果は年間500億円にも上るので、事業の直接的な収益性を云々するのは適切ではないとする論調も見られます。しかし、富士山静岡空港を必要とし、それを無くてはならないインフラだと思う県民の数はそう思わない県民の数よりも数倍少ないと見るのが妥当です。総体的な利便性のうえで羽田空港や中部国際空港を選ぶ県民はもとより、年齢的、身体的、経済的理由によって空路の旅行ができない県民も少なくありません。そもそも飛行機に乗って沖縄や鹿児島や北海道や韓国などに観光旅行に行けるほど経済的な豊かさを享受している県民は私の周りでもごく僅かです。ですから県が言う、県民にとって必要、不可欠と言う場合の県民とはごく限られた、少数の県民に過ぎないということを、私たちは冷静に認めたうえで空港問題を論ずる必要があります。

経済効果が年間500億円あるというのは何をどのように算定して出した予測かは知りませんが、その一つの根拠として用いられたのが国内線106万人、国際線32万人、合わせて138万人という需要見通しだったとおもわれます。しかし、その需要見通し自体がすっかり崩れてしまっています。需要見通しを立てた人が経済効果の予測も立てたのだとしたら、そもそもその予測も意味をなさないといえますが、空港開港によって直接的で確実性の高い経済効果が及ぶ範囲はきわめて限定的であり、その範囲を超える効果は茫漠として測りがたく、仮に何かの方法で定量化したとしても、その信憑性はいくらでも疑えます。そのようなものを楯にして膨大な建設費や開港後の大きな赤字を正当化できるものはありません。またそのようなやり方はNPMの思想とは相容れないものであるといわざるを得ません。

さて、富士山静岡空港株式会社へのターミナルビル建設整備費の貸付ですが、静岡銀行やスズキ自動車を含む県内の錚々たる企業が株主に名を連ねる100%の民間会社に県がなぜ30億円の貸付をしなければならないのか、まったく理解できません。この会社が民間の金融機関から30億円を借り入れるのはたやすいことだと思います。それなのになぜ財政難に直面している県が30億円という貴重な財源をこの会社に貸し与えるようなことをするのでしょう。聞くところによると、30億円の融資条件は、金利年1%の単利、元金は10年後の一括返済ということですが、県がこの30億円を県債で調達する場合、支払い金利は2%にはいかないにしてもそれに近いはずです。30億円の1%の金利差は10年で3億円になります。つまりこの融資によって県は3億円の損失を被ることになりますが、その負担をするのは県民です。いっぽう、空港会社が市中から30億円を調達するには2%ぐらいの金利を、しかも複利で払うことになるでしょうから、県の条件よりは3.5億円ほど負担が大きくなります。すなわち、県からの低利融資によって空港会社は3.5億円をセーブできるわけです。つまり県は3億円ほどの県民負担によって富士山静岡空港に3.5億円ほどの利益を供与しようとしていることになります。それはそれで容認できないことですが、私は何よりも30億円という、今の県にとってはまことに貴重な財源を、十分に資金調達能力をもつ富士山静岡空港株式会社への融資に用い、それによって、それよりはるかに優先すべき、緊急性の高い政策課題を抱える、医療、介護、障害者福祉、教育、防災、農業の各種事業を看過することに強く異を唱えるものです。

 

以上で空港関連予算に関する私の反対討論を終わり、続いて一般会計予算の第4款県民費の第4項、第2目のプロジェクト「TOUKAI-0」総合支援事業費について反対の討論をします。

県は昭和56年5月以前に建設された旧建築基準の木造家屋の耐震強度を高め、家屋を地震による倒壊から防ぎ、倒壊による死者をゼロとすることを目的に、該当家屋の無料耐震診断を実施し、耐震工事費のうち30万円を補助することを定めたプロジェクトTOUKAI-0を平成13年に立ち上げ、今日に至っています。平成16には高齢者世帯に対する20万円の割り増し助成もスタートさせました。しかしこ補助制度を用いて耐震工事を実施した家屋の件数は所期の目標に遠いものがあります。その最大の理由は補助対象住宅の所有者の多くが十分な経済力に恵まれず、自己が負担すべき精密診断並びに工事の費用を賄えないことにあると思われます。大地震は今日,明日にも来るかも知れず、このプロジェクトには喫緊性があります。耐震補強工事の実施件数を目標どおり達成し、家屋倒壊による死者をゼロにするというプロジェクトの所期の目的を実現するためには、家屋所有者の工事費負担を軽減することが必要です。すなわち県の助成を強化する措置が不可欠です。予算案は従来通りの補助率、補助額を据え置いていますが、それでは実効が上がらず、少なくとも予算案の2倍にする必要があると考えます。この認識をもって予算案に対する反対理由とします。

次に、第69条議案「富士山静岡空港の施設管理及び使用料に関する条例」について反対討論をします。

私は本条例案には欠けているものがあると考えます。それは空港利用者に負担してもらうべき空港利用料または空港利用税です。私はすでにこの空港から便益を享受できる県民は限られた県民であることを述べました。基本的には、羽田空港や中部国際空港よりも富士山静岡空港の利便性がまさる地域に住む人のうち、沖縄や北海道や韓国などに観光目的で行けるような、健康であると同時にある程度以上の経済的豊かさに恵まれた人々、また業務上の出張をする人々です。

空港には全体として1,900億円という建設事業費がかかり、また開港後の管理や運営には前に述べましたように毎年20億円を下らない費用がかかります。しかし、それらの費用は空港利用者だけによって賄われるのではなく、それよりはるかに多い、空港を利用しない県民によっても賄われています。空港利用者はある意味において自らの負担よりもずっと多い便益を受ける特権的な受益者であるといえます。その受益の対価として搭乗のたびに、搭乗に先立って空港利用料あるいは空港利用税の支払いを求めることは、県として十分合理性のある決定であると考えます。

県外あるいは外国からの利用者はどうするかなどは議論の余地がありますが、仮に一日の乗客が1,000人で、利用料または利用税が1,000円であれば、それによる年間の収入は単純に365百万円になり、苦しい空港事業にとって大きな意味を持ちます。高齢者や障害のあるかた、あるいは学生、そして団体利用者には減免措置を講ずることとすれば、利用者の数への影響も少ないものと思います。とくに富士山静岡空港が必要、不可欠な県民であれば、利用料あるいは利用税があるからといって、利用を敬遠することはないはずです。

着陸料の減免措置については、それなくしては就航に踏み切る航空会社が現れないおそれがあるので止むを得ないと思いますが、知事が口にし、また一部の議員からも提唱されていて、おそかれはやかれ条例への追加が論議の的になりそうな搭乗率保証については、決して取るべきではないことをこの機会に申し述べておきます。わが国の地方空港では能登空港だけが搭乗率保証を取り入れていますが、それはあの交通僻地であり過疎にも悩む能登半島奥地の特殊な条件のなかで行われたもので、地域住民と地元自治体の強い要請があってのことです。能登空港には羽田便が2便あるだけですが、おかげで、鉄道を使っても道路を使っても6,7時間かかる東京までの所要時間が、2時間弱に短縮されました。それだけ大きな便益を地元住民に与える東京便であるからこそ、県だけでなく地元の九つの自治体が協同で行っている搭乗率保証です。それだけ住民ニーヅの高い空港だからこそ、常に保証ラインを上回る搭乗率が確保されているわけです。新幹線駅がどの県よりも多く、東名、新東名と2本の高規格高速道路が東西を貫通する静岡県のように交通事情に恵まれた県で、しかも様々な理由で全国から注目を集めている富士山静岡空港に搭乗率保証を導入すれば、そこまでしなければ航空会社を誘致できないような空港を1,900億円もかけて作ったことに対する責任論が県民の間で盛んになり、静岡県は天下に恥をさらすことになります。

これで私の討論を終ります。

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