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静岡県議会議員 千石貞幸
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県政報告

私にとっての最初の議会である6月定例議会が6月14日に始まり7月3日に終わりました。この議会では20の知事提出議案が審議、議決されたほか、三つの会派の代表質問、個々の議員の一般質問が行われました。以前ブログにも書きましたが、総じて見ると6月定例議会は議論が沸騰するような問題含みの議案も課題もなくて、穏やかで単調な運営に終始しました。

県民にとって比較的重要な意味合いをもった議案としては、私が属する厚生委員会に審議を付託された「地方独立行政法人静岡県立病院機構定款の制定について」という議案がありました。

静岡県には、県立総合病院、県立子ども病院、県立こころの医療センター、県立静岡がんセンターと、4つの県立病院があります。それらはすべて県の直営方式で経営されていますが、そのうち、がんセンターを除く3病院を地方独立行政法人化することが県の方針として決まっています。実際には静岡県立病院機構(仮称)という地方独立行政法人を作り、それが3病院を統合的に経営する形態をとることになっています。6月議会では、その県立病院機構の設立、運営に必要な基本的事項を定めた定款の案が上程され、それを厚生委員会が審議し、本会議で原案通り可決されました。これによって実質的に地方独立法人、静岡県立病院機構の設立が認められ、3病院が県の直営を離れて地方独立行政法人による経営に移管されることになったわけです。実際に病院機構が設立されるのは平成20年度中のことですが、独立行政法人化によって三つの病院にどんな変化が生じるか、論点は色々です。

厚生委員会の審議では、私も県当局側にいくつかの疑問点を質し、意見も述べました。経営側から見た場合、働く側から見た場合、そして医療サービスを受ける側から見た場合、さらには税負担者の側から見た場合と、立場の違いによっていろんな課題、論点がありますが、独立行政法人化の基本的目標として県側が挙げている医療の質の向上と経営の効率化の両立はむつかしい課題です。医療の質を保証するのは先端的な医療機器、整った病院施設、そして何よりも質量ともに十分な医療スタッフですが、県の直営から独立行政法人に変わることによって、優秀な医療スタッフをより多く雇用できると考えられる根拠はなんでしょうか。

この独立行政法人は非公務員型なので、地方公務員法や地方自治法などの法的規制がなくなり、職員の採用や異動さらには処遇面での経営側の自由度が増す、職員の配置も柔軟にできる、したがって必要によっては特別の処遇によって優秀な医師を採用することも含め、望ましい人材の確保がしやすくなる、と県は言っていますが、事はそれほど単純ではないと思います。終身雇用、年功序列型の人事制度に馴染んできた病院職員が、たとえどんなに優秀でも自分達とは破格の優遇をされている医師が組織内にいることに寛容でいられるかどうか、そんなことを想像するだけでも、危うさを感じてしまいます。

静岡県内の病院は公営、民営を問わず医師不足、看護士不足に悩んでいます。医師一人当たりの患者数で、静岡県は全国でも下位にランクされています。県内の病院では働きたくないという医師が多いのは否定できない事実です。それなのに独立行政法人化された県立病院にだけは、優秀な医師を呼び寄せることができ、留めることができるとは考えられません。

実は職員組合は、この地方独立行政法人化には反対の立場を取っています。あるいは、良し悪しについての判断材料が足りないので、実施を見合わせて欲しいとの態度をとっています。単純なこととして、今は県の職員として身分を保証されていますが、独立行政法人になって公務員の立場を失えば、経営の効率化、合理化を理由に解雇される可能性も出てきますから、不安になるのは当然だと思います。県は勤務実績や成果に応じた処遇をすることで職員のモチベーションを高められると言っていますが、そういう制度が逆に全体としての人件費の抑圧のために使われるという、警戒感もあるのでしょう。しかし大切なことは病院の労使関係が調和的で、医療水準、医療サービスの向上に促進的に働くものでなければならないということです。労使があくまでも患者の立場に立って協調できる人間関係を保つことが重要です。そういう観点に立てば、県当局は職員組合との話し合いを密にして、互いに十分な了解の上に立って、新制度への移行に踏み切って欲しいと思います。

私は意見を沿えたうえで、この議案に賛成しましたが、それは、独立行政法人化が成功するか否かは、結局経営の全権を握る機構の理事長の能力と手腕にかかっており、そこに適材を得られれば、懸念点も懸念点でなくなる可能性があるからです。しかし一方で、この理事長の任期が4年というのは長過ぎます。任命責任のある知事が人選を誤った場合、それによって病院が被るリスクは少なくありません。審議において私はその点を強調しましたが、これは独立行政法人法で規定されているので、止むを得ないとは言え、もし不幸にしてそのような事態が起こった場合には、議会として牽制できる仕組みが必要だと考えています。

独立行政法人とはどんなものか、それについての説明は省きますが、インターネットで検索すれば大体のことは分かります。国立大学が独立行政法人になったことはよく知られていますし、国立病院の多くも国立病院機構という独立行政法人の傘下に入っています。沼津の東静病院もそのなかの一つです。社会保険庁の解体後にできる年金機構、公務員法改正にとってできる官僚天下りのための人材プール機構も独立行政法人です。これまで国や地方自治体が直接経営や運営に当たってきた各種の組織や機構や事業を公的な管理から切り離して、民間の管理手法を取り入れた効率的な運営形態に切り替えることが独立行政法人のおおよその狙いですが、半官半民的なこの形態がかえって非効率を招き、また、天下りの受け皿になっていることも現実です。そんなことも県立病院の独立行政法人化に対する私の警戒心につながっています。議案に賛成した県議の責任として、この案件には注意を注いでいくことにします。

 


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