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政見・所信

静岡県東部の市町合併をめぐって

■ 特別シンポジウムの開催

9月7日、三島市民文化会館で、「合併 新時代への道」と題するシンポジウムがあった。静岡新聞社、静岡放送、サンフロント21懇話会の共同主催によるもので、初めに『新・新潟市の挑戦「共に育つ」政令市を目指して』と題する篠田 昭新潟市長の基調講演があり、それから、静岡県東部地区の合併をめぐってパネル・デイスカッションが行われた。パネリストとして参加したのは、沼津市長、三島市長、裾野市長、長泉町長、函南町長、清水町長で、この顔ぶれが揃って公開の場で合併問題について論議するのはこれが初めてだと、紹介があった。

■ 日本海側初の政令指定都市、新・新潟市からのメッセージ

新・新潟市は15の自治体が合併して今年4月政令指定都市としてスタートした。人口81万、日本海側では初めての政令指定都市である。この合併実現のリード役を果たした篠田市長は新潟日報の論説委員、編集委員の職を辞して平成14年9月の市長選に出馬、その時は僅差での当選だったが、合併を成立させた後の平成18年11月の2期目の選挙では得票総数の70%を獲得して圧勝したとのこと。登壇した篠田市長の風姿、風貌、そして話し振りに接して、新・新潟市民が同氏に寄せる信頼と期待の大きさが納得できた。

篠田市長の話は具体的で説得力があった。どのような理念とヴィジョンのもとに15市町村を結集したか、また、その理念やヴィジョンに近づくためにどのような施策を必要とし、それを何年かけて実現するか、さらにはそのための財政措置はどう裏打ちされているか、などといったことについて話があったが、県並みの権限をもつ政令指定都市を目指した理由の一つとして篠田市長が挙げた学校教育の立て直しのことが、私には感銘深かった。

政令指定都市になれば、一般には県の教育委員会がもっている小学校、中学校の教員の人事権が市の教育委員会に委譲される。その人事権を用いて学校を本来の教育の場に変えたい。上からの管理や統制をゆるめて、教員を教えること以外の用務からできるだけ解放し、生徒と向き合い、生徒を教えることに集中できる学校環境を実現したい。仮に特定の学校の校長がそのような方針に反する学校運営をすれば、その校長は新潟市から出てもらう。そんな話をされた。篠田市長が現在の学校のあり方、教員の置かれている立場に強い危機感をもち、政令指定都市の首長として学校改革に取り組むことに強い使命感をもっていることが印象的だった。

■ 静岡東部の広域合併はどうなる

さて、3市3町の首長によるパネル・デイスカッションだが、どの首長からも合併問題に真剣に取り組もうとの気概を感じることはできなかった。そもそもこの3市3町に御殿場市と小山町を加えた東部広域都市づくり研究会が、10年後を目途に合併し政令指定都市を実現させるとの基本方針に合意したのが4年前の平成15年。その合意が本気であったなら、これまでに相当の検討や協議がなされていて当然だが、実際にはまったくと言っていいほど進展がない。その合意に関しては、函南町長が、合意に参加した4市4町を合わせても政令市の人口要件である70万人に達せず、もともと無理な話であったというニュアンスの、合意に立ち会った当事者の一人としてはどうかと思われる発言をしたのみで、他のパネリストからの言及はなかった。

三島市長は、段階的合併を重ねるという手間のかかる方法でなく、一気に政令市を作るべきであり、そのためには伊豆半島全体を含む合併も辞さないと述べた。それに対して沼津市長は政令市でなく人口要件30万人の中核市でもよいのではないかと言った。裾野市長は東部での合併が進まないのは沼津市と三島市が歩み寄ろうとしないからだと言い、函南町長は人口4万足らずの町が主導権をとるわけにいかない、できるのは沼津と三島をくっつける接着剤的な役割だけだと言い、長泉町長と清水町長は政令市実現のための合併の必要性は認めるとは言いつつ、住民の意思しだいであるといって明言を避けた。いずれにしてもほとんどの聴衆は、この人たちが首長でいる限り静岡東部で合併協議の具体的進展は期待できそうにないと、観じたに違いない。

パネル・デイスカッションのアドヴァイザーとして同席した篠田市長は、新潟の合併を進める過程で最終的な議決権をもつ議会が重要な役割を果たしたことに触れ、首長もさることながら早い段階から各市町の議会が主導権をとることが肝心だと言っていた。しかし、自治体内部での住民との情報交流、自治体をまたがる意思の疎通や協議において、これまでのところ東部の関係市町の議会が積極的な役割を果たしたことはないようである。仮に3市3町が合併すれば首長は6人から1人になり5人が失職する。議員の数も4分の1程度に減る。合併によって自分の地位を失うかもしれない首長や議員が本音では合併を避けたいと思っているとしても不思議ではない。

ところで、パネル・デイスカッションの論者達は政令市とか中核市とかいっているが、これは現行法、現行制度での取り決めである。5年後、10年後も政令市とか中核市とか特例市が今の権限のままあるとは限らない。民主党政権の実現が夢ではなくなった今、民主党の政策大綱にある基礎的自治体が生まれることになるかもしれない。県はなくなり、全国で300の基礎的自治体が直接国と結びついた行政組織になれば、基礎的自治体は人口の多少にかかわらず同等の権限をもつ可能性があり、そうなれば政令市や中核市といった差別はなくなる。検討課題は多いが、この構想が実現する場合を考えれば、今なにも、人口要件70万人の政令市を目指す合併に固執することはない。それよりも実現可能性の高い30万人、40万人の合併新市をまず目指し、必要によってはそれを核としてさらに大きな合併へと発展させるのがよいと思う。

それにしても肝心なのは民意であり、住民が合併の是非を検討するのに必要な情報の発信や提供である。民意によって関係市町の議会を動かし首長を動かすところまで持ってゆくには、われわれ県会議員の役割が重要であることを、今回のパネル・デイスカッションを聞いてあらためて実感した。

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